皆さま、下請中小企業振興法にある「振興基準」のことをご存じでしょうか?「振興基準」とは、国が(下請取引の)受発注間の望ましい取引慣行を示すガイドライン(基準)です。このガイドラインに違反があれば、政府は必要に応じて下請事業者及び親事業者に対して指導、助言を行うことにになります。あくまでも指導・助言であり、行政処分までいくことはありません。この点は、経営者保証のガイドラインに似ていますね。
先週7月29日、経産省・中小企業庁は更なる下請中小企業の振興を目的に、価格交渉や価格転嫁しやすい取引環境整備や下請Gメンが把握した問題事例への対応に関する事項などについて改正しました。詳しくは下URLをご覧ください。
中小企業庁HP記事:中小企業庁:振興基準 (meti.go.jp)
上URLにも書いてありますが、今回の改正のポイントは以下のとおりです!下請取引において親会社との価格交渉に苦労されている事業者もいらっしゃるかとも思います。価格交渉の際は、是非下にあるポイントを頭に入れて親会社と協議いただければと思います。
1. 価格交渉・価格転嫁
- 毎年9月及び3月の「価格交渉促進月間」の機会を捉え、少なくとも年に1回以上の価格協議を行うこと
- 労務費、原材料費、エネルギー価格等が上昇した下請事業者からの申出があった場合、遅滞なく協議を行うこと
- 下請事業者における賃金の引上げが可能となるよう、十分に協議して取引対価を決定すること
2. 支払方法・約束手形
- 下請代金は、物品等の受領日から起算して60日以内において定める支払期日までに支払うこと
- 令和8(2026)年の約束手形の利用廃止に向け、できる限り、約束手形を利用せず、また現金払いを行うこと
3. パートナーシップ構築宣言
- パートナーシップ構築宣言を行い、定期的に見直すこと。また、社内担当者・取引先に宣言を浸透させること
4. 知財取引・その他
- 下請事業者の秘密情報(ノウハウ含む)の提供や開示を強要しないこと
- 下請事業者の直接的な利益に十分に配慮した協議や書面等での合意を行わずに、協賛金、協力金等を要請しないこと
- 取引上の交渉の際に、威圧的な言動による交渉を行わないこと
また、当件に関連し、買いたたきが疑われる行為があった場合の下請事業者の対応について解説した日刊工業新聞記事を紹介しておきます。
日刊工業記事「価格転嫁・取引適正化に向けた一歩をどう踏み出すか? 後押しする取組みも」 >>https://newswitch.jp/p/33148
最後に、下請けの立場の事業者も、場合によっては外部会社への製造委託(2次下請けなど)、及び(フリーランス等への)サービス委託で「発注する」側になることも多いかと思います。その折には、是非当ガイドラインにある「公正な取引」を意識して発注先と付き合うことも重要かと考えます!