先週、2022年度(10月から)の最低賃金改定に関する議論が中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)で始まりました。また、現在公示中の参院選においても最大の争点である物価高に関連し、今後の最低賃金についても与野党間で舌戦がなされているようです。
1)最低賃金2022の政府方針について(骨太の方針から)
10月に改訂される最低賃金についいての政府方針については、先月公表された「骨太の方針2022」には以下の記述があります。
「最低賃金の引上げの環境整備を一層進めるためにも事業再構築・生産性向上に取り組む中小企業へのきめ細やかな支援や取引適正化等に取り組みつつ、景気や物価動向を踏まえ、地域間格差にも配慮しながら、できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000 円以上となることを目指し、引上げに取り組む。こうした考えの下、最低賃金について、官民が協力して引上げを図るとともに、その引上げ額については、公労使三者構成の最低賃金審議会で、生計費、賃金、賃金支払能力を考慮し、しっかり議論する。」
現在の最低賃金全国平均は930円であり、昨年は全国一律28円UPとなりました。上の抜粋にあるとおり、政府は「できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000 円以上となることを目指し、引上げに取り組む」とあります。ご承知のとおり、今回の最低賃金に関する議論・審議においては、今年に入ってからの急速な物価高が大きく影響しており激しい議論になりそうです。物価が上がると実質的な賃金が下がる一方で、経営も厳しくなり、労使双方に影響が及ぶからです。
普通に考えれば、最低でも昨年並み、それ以上の最低賃金引上げ幅になりそうですね。例年通りであれば、厚労省の中央審議会の答申は、今月中旬~下旬になります。これを受け、8月には各都道府県の地方審議会が最終答申する流れになります。以下、参考情報として、和歌山県を含む近畿圏の現在の最低賃金表を貼り付けておきます。
2)「最低賃金引上げの影響および中小企業の賃上げに関する調査レポート」(日本商工会議所)
経営者の皆さまへの参考情報として、今年4月に日本商工会議所が公表しましたレポートを紹介しておきます。
日本商工会議所レポート:「最低賃金引上げの影響および中小企業の賃上げに関する調査結果」 >>https://www.jcci.or.jp/20220405_saitchintyosa.pdf
- レポートの5,6ページにあるとおり、最低賃金アップで一番影響を受けるのは、パートタイム労働者が多い「宿泊・飲食業」「小売業」「介護・介護業」などの事業者かと思います。
- 当レポート(約20ページ)の中から以下1ページだけ紹介しておきます。これは、「今年の最低賃金の引上げ額が30円、40円となった場合の経営への影響と対応策」についてのアンケート結果です。業況、業種等により対応策はまちまちかとは思いますが、10月の最低賃金引上げへの対応が必要な事業者は今から対応策をご検討いただければと思います。
3)正社員賃金の最新動向について
最後に、最低賃金関連の情報ではありませんが、日本商工会議所が毎月公表しています景況調査レポート最新版に「正社員の賃金動向」についての調査結果が出ておりましたので、紹介しておきます。
6月度の景況調査レポート(日本商工会議所作成) >>https://cci-lobo.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2022/06/LOBO202206.pdf
以下、レポートの2ページ目からの抜粋になりますが、物価上昇を理由とする賃上げが大幅に増加する一方、先行きの不透明感やコスト増が賃上げの足かせになっているようです。
「2021年12月調査と比べ、賃金を引き上げる理由として、物価上昇を挙げる企業が約3割と大きく増加した。物価が上昇する中、人材確保などのために賃上げを実施している様子が読み取れる結果となった。一方で、賃金の引き上げを見送る・未定とした企業では、先行きの不透明感への懸念や、仕入価格の上昇や燃料費の高騰などのコスト増に価格転嫁が追い付いておらず、賃上げの原資を捻出できていないという厳しい経営実態がうかがえる。」