【政府の重点投資分野①】「人への投資」に関わる事業者支援について

経営知識

ご承知のとおり、岸田政権が今後推進しようとしている「新しい資本主義に向けた重点投資分野」は以下の5つになります。本日は、そのひとつである「人への投資」について今後の事業者支援の方針について書いてみます。新しい資本主義の実行計画(ap2022.pdf (cas.go.jp)の中の「人への投資」に関する記述は、上記右URL資料の4~11ページにあります。

1)【人への投資】に関する今後の事業者支援策の方向性

①職業訓練、学びなおし(リカレント教育)、生涯教育等への投資

実行計画には以下の記述があります。

「時代や社会環境の変化に応じて、需要のある職種は新しいものに入れ替わる。また、教育訓練を受けた従業員の割合が増えると、労働者一人当たりの労働生産性や一人当たり平均賃金が上昇する効果があるとのデータがある。このため、成長分野への円滑な労働移動を進め、労働生産性を向上させ、更に賃金を上げていくためにも、個々の企業内だけでなく、国全体の規模で官民が連携して、働き手のスキルアップや人材育成策の拡充を図ることが重要である。その際、デジタル人材に加え、働く世代全体のデジタルスキルの底上げを図ることにウェイトを置く。」

政府はこの分野に今後3年間で4,000億円規模の施策パッケージを実施すると明言していますが、その第一弾が今年4月に新設された「人材開発支援助成金」の「人への投資促進コース」でしょう。この厚労省の助成金は、事業主が労働者に対して訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。詳しは右URLにある当方の配信記事をご覧ください。>>https://www.yano-support.com/management/honebuto2002draft/

今後編成される第2次補正予算にも、追加のリカレント教育・デジタル人材の育成に関わる支援策が、厚労省・経産省の予算に盛り込まれるのではないかと考えます。大企業と比べ、中小事業者にとってはOff-JT等の人材教育、自己啓発支援は時間・コストの面で大変難しいのが現実ですので、政府には中小事業者が少しでも人材教育を実施できるような環境整備・支援策を実行してもらいたいものです。

②デジタル人材育成・専門能力蓄積への投資

以下、実行計画からの抜粋になります。

企業が賃金を引き上げるためには付加価値を高める必要があり、そのためにもデジタル分野を中心に人的投資を進めていくことが必要である。大企業、中小企業、IT企業で求める人材が異なる中、デジタル実装を進め、地
域が抱える課題の解決を牽引するデジタル人材について、~中略~ デジタル人材を育成できる体制を段階的に構築し、2026年度までに合計330万人を確保する。このため、オンライン上のプラットフォームを整備し、デジタル人材の育成に取り組む大学・教育機関や企業の参画を求め、デジタル人材に共通して求められる教育コンテンツの提供や、企業の事例に基づいた実践的なケーススタディ教育プログラム等を実施する。」

①にも当然関わってくることですが、中小事業者における「デジタル人材の育成」の支援策が、質・量ともに今後増えていくかと考えます。

③副業・兼業の拡大

以下、実行計画からの抜粋です。

「従業員1,000人以上の大企業では、特に副業・兼業の解禁が遅れている。副業を通じた起業は失敗する確率が低くなる、副業をすると失業の確率が低くなる、副業を受け入れた企業からは人材不足を解消できた、といった肯定的な声が大きい。成長分野・産業への円滑な労働移動を進めるため、さらに副業・兼業を推し進める。

専門性を持った人材の確保に苦労している地方の中小事業者にとって、大都市圏・大企業の人材の副業を受け入れることは大変有益かと思います。今後、地方の中小事業者が副業をもっともっと活用できるような環境整備、具体的な支援策が出てくることを期待します。

以上、【重点投資分野】のひとつである「人への投資」の中で人材育成に関わる事業者支援について書いてみました!大企業が社員のデジタル化教育・リカレント教育を積極的に実施していることを報じた新聞記事等を最近よく目にしますが、今後中小事業者とのスキル・知識の格差がどんどん大きくなっていくような気がします。大企業は自力で社員教育等対応できますが、中小事業者には自力ではなかなか難しいことも事実。個人的に、政府にはもっともっと中小事業者へのリカレント教育・デジタル化教育支援に注力してもらいたいと期待しています。

最後のもうひとつ。以下、一番身近な問題である「賃上げ」についての政府方針、支援策、私見になります。

④賃金引上げへの支援

「我が国の大きな課題として、単位時間当たりの労働生産性の伸びは決して諸外国と比べても悪くないにもかかわらず、賃金の伸びが低い。賃金が伸びなければ、消費にはつながらず、次なる成長も導き出せない。」(実行計画からの抜粋)

10月からの最低賃金の引上げ額は全国平均で31円と過去最大になり、最低賃金額は全国平均で930円となりました。政府は2025年度にも全国平均で1時間あたり1000円以上を目指す方針です。また、最低賃金だけでなく、政府は民間企業の賃上げを促進すべく、今後も様々なモチベーション・支援策を出してくるかと思われます。

この数年、国の代表的な補助金(ものづくり補助金、持続化補助金など)で「最低賃金枠」等が新設されたことは、その一例でしょう。また、実行計画では以下の通り、賃上げ税制等の一層の活用を事業者へ促していく意向です。

民間企業のより積極的な賃金引上げを支援するための環境整備として、賃上げ税制について税額控除率を大胆に引き上げる(大企業:20%→30%、中小企業:25%→40%)等、抜本的に拡充を図った。全国各地での説明会の実施~中略~等による周知を徹底することを通じて、本税制の一層の活用を促進する。」

*賃上げ促進税制の詳細資料:chinnagesokushin04gudebook.pdf (meti.go.jp)

事業者としても優秀な人材の維持・確保のためにも「賃上げ」は検討すべきでしょう。とはいえ、経営への影響を考えざろう得ないことも事実です。大変難しい問題ですが、やはり事業再構築等の新しい取組で「売上・利益」を維持・拡大することが一番なのでしょう!そのためにも社員のモチベーション向上、良い人材の採用確保は重要なんでしょうね!

なんか、「鶏が先か卵が先か」の問題にも似ている気がしないでもないですが?とはいえ、「会社は人」という言葉もあります。今後、商売・事業もどんどん労働集約型から知識集約型へ移行していく流れを考えれば、「人への投資」は避けては通れないことかと考えます。

矢埜 幸男

矢埜 幸男

これまで幅広い分野で多くの和歌山県内事業者を支援してきました。特に、各種補助金の申請サポート、プレスリリース作成サポートにおいては、事業者のお役に立てると自信を持っております!

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矢埜 幸男

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