今後の経済対策・第2次補正予算案に盛り込まれた来年の経産省主要補助金・支援策については、先日以下の記事でご案内したとおりで。
【重要】来年の経産省主要補助金等の概要・枠組が判明しました!是非ご一読ください! – YMO (yano-support.com)
本日より各主要補助金・支援策について、私見を交え詳しく解説してみたいと思います。1回目の本日は「事業再構築補助金」になります。
現在8回目公募が始まっておりますが、9回目公募(来年4月頃の締切?)からの申請枠・補助スキームは以下のとおりになります。(経産省の第2次補正予算案PR資料からの抜粋:右URL資料の17ページ>>pr_hosei_221109.pdf (meti.go.jp))
以下、各申請枠について解説します。
1)成長枠(旧通常枠)~売上減少要件が撤廃に
- この成長枠は通常枠の後継ですので、多くの申請者を見込んでいる申請枠かと思います。
- この枠では「売上減少要件」が撤廃されました!これが一番大きい変更点かと思います。コロナ禍でも商売が比較的順調であり「売上減少要件」を満たさないので、事業再構築補助金への申請が不可能であった事業者も申請可能になります。申請者数が減少傾向ですので、経産省・中小企業庁としては、申請のハードルを下げたい(門戸を広げたい)という意向もあったかと推察します。
- ちょっと気になるのが、PR資料には「成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者に向け」との記述があることです。ここでいう「成長分野」とは何か不明ですが、再構築事業テーマに関し何らかの要件が出てくれば、少しやっかいなことになりますね。ただ、一番申請者が多かった通常枠の後継枠ですので、門戸を広げるためにもそのような要件はない、つまり事業再構築の分野を限定することはないと個人的に予想します。
- 今回、補助率が大きく下がりました。(中小企業で2/3➡1/2)ただし、「補助事業期間内に賃上げ要件を達成した場合、補助率を中小2/3、中堅1/2に引上げる」とのことです。「賃上げ要件」とは具体的に何か不明ですが、これをクリアすれば、今まで通り補助率は2/3になります。(賃上げをインセンティブにしたい政府方針の現れかと思います。)
- さらには「成長枠」で申請する事業者の中で、中堅・大企業へ成長する事業者や、大規模な賃金引上げ等を行う事業者に対しては、補助金額や補助率を上乗せするそうです。
2)物価高騰対策・回復再生応援枠(今までの緊急対策枠と回復再生応援枠の統合)
- この申請枠は、今までの緊急対策枠と回復再生応援枠が統合されたものです。
- 補正予算案PR資料には、「新型コロナの影響に加え、物価高騰等により業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者の事業再構築を引き続き支援するため、補助率を引き上げた特別枠を創設します」とありますが、補助率は中小企業で3/4から2/3と下がっています。「一部3/4」とありますが、その要件は不明です。(小規模事業者であること、補助金額が少ないこと(例:1000万円以下)、賃上げ要件などが考えられます。)
- この申請枠は「特別枠」ですので、成長枠(旧通常枠)より採択率が高いくなるのは間違いないと思いますが、今の回復再生応援枠レベル(採択率66%ぐらい)になるかは分かりません。
- 念のために、この申請枠では今まで通り売上減少要件が適用されます。適用されないのは、「成長枠」のみになりますので、ご注意ください。
3)最低賃金枠(今まで通り継続)
この申請枠は今まで通り継続され、一番採択されやすい申請枠になります。(採択率は80%程度)最低賃金枠の概要は右URL概要資料の6ページをご覧ください。>>summary008.pdf (jigyou-saikouchiku.go.jp)
4)グリーン成長枠
この申請枠は継続の上、要件を緩和した使い勝手の良い「エントリー」類型が新設されます。グリーン成長枠の概要は上URL資料の7ページにありますが、エントリー類型の具体的内容については今後公表されるかと思います。
5)産業構造転換枠(新設)
- 第2次補正予算案PR資料には、この新しい申請枠について、「国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者に対し、補助率を引き上げる等により、重点的に支援します」とあります。
- 「産業構造転換」ということを考えれば、衰退産業から成長産業への思い切った事業再構築が対象になるかと推測します。詳しい申請要件については事務局からの発表を待つ必要がありますが、事業再構築の中でも「事業転換」、「業種転換」が対象になるような気がします。その意味で「廃業を伴う場合2000万円上乗せ」があると考えます。
- 日本の産業構造は成長分野・業種へと転換すべきことは、近年ずっと指摘されたことです。その点、欧米と比べ遅れていることは確かと思います。事業を転換するには大きなリスクが伴うのは当然のことですが、この申請枠を活用し本当に思い切った事業再構築(事業転換、業種転換)を図ることも選択肢のひとつかと思います。
- 成長枠との違いは、「補助上限額は同じだか、賃上げ要件は関係なく補助率が2/3であること」、「廃業を伴う場合、2000万円の上乗せがること」のようです。
6)サプライチェーン強靭化枠(新設)
- 第2次補正予算案PR資料には、この新しい申請枠について「海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う事業者を支援します」とあります。つまり、現在海外で製造・調達している製品・部品等を国内生産に移すことが要件のようです。国内で新たに生産拠点を新設するわけですから多額の投資が必要とのことで、5億円という巨額の上限額となったと理解します。補助率は1/2となります。
- 半導体産業への支援に見られるように、新型コロナの影響(中国のゼロコロナ政策など)・不安定な国際情勢・経済安全保障・円安という側面から、政府は国内サプライチェーンを強靭化する意図で製造の国内回帰を促進したい考えかと思われます。とはいえ、生産拠点の変更・移管は多大な投資を伴う大きな意思決定ですので、熟考の上、国内生産への移行がベストと判断される事業者がいらっしゃれば、当補助金への申請を勧めます。
- 申請要件など詳細は、今後公表されます。上限5億円ですので、採択のハードルも高くなるのでしょうね。
最後に、前回の記事で事業再構築補助金について書いた以下の点もご留意ください!
- 2次補正予算案の予算額は5800億円となりました。本年度の予算額は6000億円でした。(3~4回分の公募に相当)
- 1年半前に始まった大型補助金ですが、事業再構築のニーズも一巡し、今後の申請者数は徐々に減少していくと勝手に予想しています。(また、採択も1事業者で1回だけで、複数回の申請は不可ですので)
- 今回の予算額を考えれば、現在公募中の第8回公募(来年1月13日締切)以降、3か月毎に4回ぐらいの公募があるのではと予想します。(あくまでも、個人的な予想ですので、その点ご了承ください。)