しばらく補助金・事業者支援に関する大きなニュースもなく、記事の配信をさぼっていましたが、本日より再開したいと思います!
さて、政府は毎年6月に経済財政運営の基本方針である「骨太の方針」を公表していますが、先週この原案を公表しました。右URL資料がその資料になります。>>shiryo_01.pdf (cao.go.jp) 本日は今回の骨太原案の中から事業者支援の方針に係わる事項について簡単に解説したいと思います。
1)来年からの事業者支援の基本方針について
以下、岸田政権が目指す「新しい資本主義」についての記述における、今回の原案の目次(左側)と昨年の骨太方針の目次(右側)と比較してみました。
- 今後の重点施策については大きな変更はなく、引き続き「人への投資」「DX」「GX」「スタートアップ」「科学技術・イノベーション」の促進・実行が明記してあります。
- 今回、重点施策として新たに「インバウンド戦略の展開」が追加されました。直近では海外からのインバウンド客もコロナ前の7~8割まで回復しているとのことですが、これを受けてのことかと考えます。
- また、新たに「国内投資の拡大とサプライチェーンの強靭化」が追加されています。簡単にいえば、生産拠点の国内回帰、(反動外産業の)国内誘致等で国内の投資を拡大させたいということでしょう。
- 「人への投資」については昨年も明記してありましたが、今後特に「構造的賃上げ」を実現したい考えのようです。最低賃金について、原案には「最低賃金については、昨年は過去最高の引上げ額となったが、今年は全国加重平均1,000円を達成することを含めて、公労使三者構成の最低賃金審議会で、しっかりと議論を行う。また、地域間格差に関しては、最低賃金の目安額を示すランク数を4つから3つに見直したところであり、引き続き、その是正を図るため、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる。」と書いてあります。
- 事業者支援には直接関係はありませんが、最近メディアでも盛んに報じられている通り「少子化対策・こども政策の抜本強化」が新しい資本主義の項目に追加されています。
2)来年からの補助金等の具体的な事業者支援策の方向性について
①「歳出構造を平時に戻す」、事業者支援の財源である補正予算額もコロナ前のレベルへ!
ご承知のとおり、コロナ以降は非常時として莫大な補正予算が組まれ歳出が膨張してきました。(補正予算が20年度は73兆円、21年度と22年度はいずれも30兆円を超えた)コロナ禍も一段落したこともあり、今回の骨太原案では「歳出構造を平時に戻す」と明記してあります。近年、補正予算は常態化していますので、今年の秋以降に2023年度補正予算が編成されると予想しますが、補正予算額はコロナ前にレベル(10兆円以下)に抑える方針のようです。。経産省の主要な補助金・事業者支援策は毎年補正予算に計上されますので、来年の補助金の予算規模等に影響してくる可能性があります。
②成長志向の企業への集中投資、重点施策促進のための補助金
- 上記①のとおり来年以降の事業者支援の予算規模はコロナ前の平時に戻るかと思いますが、今後の支援方針として以下の2つが挙げられます。
- 一番下に今回の原案の中から事業者支援に係わる「中堅・中小企業の活性化」の記述を抜粋しましたが、その中に「成長力のある中堅企業の振興や売上高100億円以上の企業など中堅企業への成長を目指す中小企業の振興を行うため、予算・税制等により、集中支援を行う」とあります。経産省はそのために今年2月に「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」を立ち上げています。右URLが当研究会の中間報告書になりますが、ご関心のある方は一読ください。(>>002.pdf (meti.go.jp)) 小規模事業者への支援は、当然持続化補助金等で継続されることは間違いありませんが、今後は成長志向の売上100億円ぐらいを目指す企業への支援を強化する方向です。
- 政府は今後上記1)にある重点施策(「DX」「GX」「科学技術・イノベーション」など)を推進するために、既存の補助金等の枠組みを変更していく可能性が高いと考えます。既に事業再構築補助金の申請枠等の枠組みにはこの点が大きく反映されていますね。
- また、「賃上げ」が重点施策である以上、補助金スキームにおいて「賃上げ」が引き続き大きなインセンティブになるのは間違いないでしょう。(賃上げを条件にした補助金額の上乗せ、補助率の引上げなど)
③経産省の主要補助金はどうなる?
- まずは、経産省の主要補助金である中小企業生産性革命推進事業 (ものづくり補助金、持続化補助金、IT導入補助金、事業承継補助金)ですが、国庫債務負担として来年分の予算が2000億円予約されています。(正式には次回補正予算で計上されるかと思います。)故に、上にある4つの主要補助金は来年も継続されることは間違いありません。当補助金は3年ほど前に(単年度予算ではなく)基金化されました。現在の残高は不明ですが、来年以降は採択率がどうなるか気になるところです。近年どの補助金もコロナ前と比べ高い採択率となっていますが、来年以降は採択率が下がっていく可能性があるかと考えます。
- 次に事業再構築補助金ですが、下の抜粋に「切れ目ない継続的な中小企業等の事業再構築~を行う」とありますので、個人的に来年も継続されると予想します。ただし、予算額は結構減るのではと思ってます。(前回の補正予算では約6000億円)事業再構築のニーズも一巡したこと、そして今後も重点施策促進のための補助金という傾向が強くなることを考えれば、今までのような巨額の予算は必要ないとも思います。減った分を上の4補助金予算へ回してもらえれば良いのでしょうが、そうはいかないでしょうね?