皆さま、昨年経産省が、日本経済の下請け関係・構造を改善するために開始しました「パートナーシップ構築宣言」をご存じでしょうか?この制度は、以下のとおり発注者(親事業者)が下請事業者との望ましい取引慣行の遵守を宣言し、特設サイトに企業名を掲載することで、各企業の取組の「見える化」を行うものです。具体的には、「サプライチェーン全体の共存共栄」や「規模・系列を超えた新たな連携」、「適正な取引価格の実現」、「下請代金の支払条件改善」などを、企業の代表者名で宣言(コミット)する仕組みです。
日本商工会議所(日商)も、今後パートナーシップ構築宣言を積極的に推進する意向であり、この度、以下の専用サイトを開設しました。
*日商:パートナーシップ構築宣言特設サイト>>https://www.jcci.or.jp/partnership/
パートナーシップ構築宣言の詳細、及び方法については、上にある特設サイトをご覧ください。
この宣言は、「発注者が宣言する」ものですが、以下のQ&Aにあるとおり、大企業でなく、「あらゆる業種・規模の事業者」(個人事業主含む)に対して宣言をお願いするものです。
宣言するメリットは上記日商特設サイトにありますが、目先のメリットとしては、次回ものづくり補助金の公募において、「加点項目」になっております。今後、ものづくり補助金への申請を予定されている事業者様、宣言することをご検討いただければと思います。改めて書きますが、宣言する上で、業種・規模・下請けの立場等は関係ありません。
宣言に要する作業負荷ですが、特設サイトにA4で1枚の宣言書ひな形が張り付けてあります。A4で1枚の宣言書を作成するだけですので、極端な話、10分もあれば作成できるでしょう。ただし、宣言する以上、道義的に宣言内容を守る必要はあるかと思います。(とはいえ、以下のQ&Aのとおり、守れなかった場合、罰則があるわけではありません。)
以下、当件に関する補足情報、私見にになります。
①現在、和歌山県で宣言している事業者は、以下の6社。今後、中小、小規模事業者も、(下請け関係など関係なく)どんどん登録(宣言)することが期待されていいます。
②私は、前職でイタリア(ミラノ)に8年ほど駐在しておりました。イタリア産業の特性として、日本と比べても大企業が極めて少なく、中小企業で成り立っている国です。島精機様のような数百億円の中規模の大企業は結構あるのですが、年商1000億円以上の民間企業は、30年前当時、自動車のフィアットと事務機器のオリベッティぐらいしかありませんでした。(通信・電気・ガス等の国営企業は除いて)
このような特性から、複数の中規模企業を中心に、イタリア各地に名高い産業クラスター(繊維産業など)が形成されており、その地域の事業者は下請け関係にあっても、より「事業パートナー」の性格が強かった気がします。故に、日本と比べても、企業の「優越的な地位の乱用」は、あまり問題にならなかったように思います。
欧米先進国と比較しても、日本の大企業と中小企業のあらゆる格差(給与レベル・生産性など)が著しいのはデータが物語っています。この格差を是正すためにも、「パートナーシップ構築宣言」等の制度慣習改革の動きは大変重要と考えます。とはいえ、中小事業者においては、制度慣習改善以上に、IT化等による自力での生産性向上・事業再構築が、一層重要であるとも明記しておきます。(日本の中小企業におけるIT化・業務効率化の動きは、欧米先進国と比べかなり遅れていることは事実ですので。)