来年の大型補助金である「事業再構築補助金」(正式名:中小企業等事業再構築促進事業)については未だ概要しか出ていませんが、当補助金について質問を受けることが多くなってきました。そこで、少し長くなりますが、現時点までの情報を踏まえ、以下もっと深く当補助金を解説したいと思います。
- 「事業再構築補助金」、現時点での情報を踏まえ突っ込んで解説します!
先週、中小企業庁は、事業再構築補助金の基金・事務局の運営方法、ITシステム等に関する資料提供を民間企業へ依頼しました。
- 中小企業庁HP:「令和2年度「中小企業等事業再構築促進事業」に係る資料提供依頼について」
>>https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/nyusatsu/2020/201216.html
ここでいう民会企業とは、大手コンサル会社、IT会社や電通・パソナなど事務局運営の実績がある会社かと思いますが、中小企業庁から事務局のプレ公募のような形での資料提供依頼は初めて目にします。やはり予算額1兆円を超える超大型補助金ですので、その運営方法・制度設計等にかなり慎重になっているのだと推察します。来年かなりの申請数が予想されますので、「審査方法をどうするのか?審査員の確保など体制をどうするのか?システムはどうするのか?」などなど懸案事項は沢山あるかと思います。
さて、基金額が1兆円を超える事業再構築補助金ですが、その概要は下の経産省PR資料のとおりです。
- 経産省PR資料「事業再構築補助金」
>>https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/nyusatsu/2020/201216.pdf
- 申請枠について
申請枠はPR資料のとおり4タイプありますが、配信先のほとんどの事業者様は「中小企業(通常枠)」への申請になるかと思います。
*中小企業(通常枠):補助額 100万円~6,000万円、補助率 2/3 (それでも補助上限額6000万円ですから、本当に大きな補助金ですね!)
2)事業再構築とは具体的に何か?
皆さまの当補助金に対する一番の疑問は以下のことかと考えます。
「事業者の「事業再構築」などを支援するとあるが、具体的にはどのような事業(新規取組)が補助対象となるのか?業種転換などリスクの高い取組だけが対象なのか?」(某事業者の質問)
この点については、PR資料に以下の記述があります。
「新規事業分野への進出等の新分野展開、業態転換、事業・業種転換等の取組や、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、 思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援」
ということは、「事業再構築」とは①新分野展開、②業態転換・事業業種の転換、③事業再編、④規模拡大のいずれかを指すと思われます。
また、同じPR資料に「事業再構築のイメージ」として3つのサンプルがありますが、先週官邸HPに公表された資料(4ページ目)には以下の事例サンプルが載っています。
>>https://www.kantei.go.jp/jp/singi/katsuryoku_kojyo/katsuryoku_kojyo/dai1/siryou2.pdf
- 製造業
- 産業機械向けの金属部品を製造している事業者が、人工呼吸器向けの特殊部品の製造に着手、新たに工作機械を導入。
- 光学技術を用いてディスプレイなどを製造している事業者が、接触感染防止のため、 タッチレスパネルを開発。医療現場や、介護施設、公共空間の設備等向けにサービス を展開。
- 飲食業
- 売上が激減した飲食店が、客席や厨房等の設備を縮小して経費を節減。その一方 で、オンライン上で注⽂を受付できるサービスを導入。宅配や持ち帰りにも対応。
- 飲食店が、観光客の三密回避のため、来客データの収集と分析をし、来店予測、 混雑予報AIを開発。飲食店をはじめ様々な業種にサービスを展開。
- 小売業
- 小売店が店舗への来客数減少に伴い、売上が激減したことを契機に店舗を縮小、 ネット販売事業やサブスクリプションサービス事業に業態を転換。
- 金属加工業
- 金属表面処理技術を活かし、銀の抗菌被膜を形成する抗ウイルス製剤の製造に 着手、生産ラインを新規に立ち上げて主力事業化。
- 宿泊業
- 宿泊客数が激減し、ホテルの稼働率が低下している中、テレワークの拡大を受けて、客室をテレワークルームやコワーキングスペースに改造し不動産賃貸業に業種転換。
上の事例を見る限り、①新分野展開として「新製品・サービスの製造・提供」に取り組む事例が多いようですが、小売業の事例では「販売チャネル・提供方法の見直し・転換」も対象のようです。また、「④規模拡大」の定義とは何なのか気になります。これを大きく捉えれば、かなり幅広い事業(新規取組)が対象になるような気がします。(そうであって欲しいですが)
また、ものづくり補助金申請等では「経営革新」という定義がありますが、「事業再構築」の定義と何が異なるのか興味があります。(当然、重なる部分も多いでしょうが)
いずれにせよ、PR資料にある通り、後日経産省が公表する「事業再構築指針」に「事業再構築とは、より具体的に何か?」の定義が明記されるか思います。
3)申請要件について
PR資料には申請要件として以下の2つがあります。
- 申請前の直近6カ月間のうち、売上高が低い3カ月の合計売上高が、コロナ以前の同3 カ月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。
- 自社の強みや経営資源(ヒト/モノ等)を活かしつつ、経産省が示す「事業再構築指 針」に沿った事業計画を認定支援機関等と策定した中小企業等。
- 当方、①「売上減」の要件は付さないだろうと予想していましたが、結果として要件の一つになりました。来年申請を検討される時は、この要件にご注意ください。
- ②に「事業計画を認定支援機関等と策定した中小企業等」とありますが、具体的には何なのか不明です。昨年度まで、ものづくり補助金申請で必須であった「認定支援機関等の確認書」の提出を求められることなのか、それとも新たに別の何かが必要なのか、今のところ分からないです。
4)補助対象費用について
- 補助対象費用は、「設備投資」(IT投資含む)は間違いないです。
- 一部報道では「M&A費用」も対象になるとのことでしたが、PR資料にはありませんので、現時点では不明です。後日何かの情報が入るかもしれません。
- その他の費用については対象外かと思いますが、本当にそうなのか今のところ明言できません。例えば、「事業再構築」ということであれば、「建物」や「内装改修費」など対象になってもおかしくないような気がするのですが?
5)補助金活用の際の金融支援
今回の3次補正予算案にある「日本公庫の資金繰り支援」(186億円)の中に以下の「設備資⾦貸付利率特例制度の創設」があります。
- 新事業・ビジネスモデルの転換等の前向きな設備投資に係る適⽤⾦利を、貸付後当初2年間0.5%引き下げ。
- 事業再構築補助金を活用しての設備投資の場合、この低利融資制度を活用できる可能性が高いかと推察します。
以上、長々と書いてしまいましたが、前回配信した東商の事業者アンケート調査結果のポイントの一つとして以下の文がありました。
- 「「新たな販路開拓・取引先拡大」や「新製品・新サービスを開発」「異業種へ参入」など約4割の企業が業況回復に向けて新たな取り組みを実施している。」
新型コロナの影響を乗り越えるため、(今後公表される「事業再構築指針」にある)「新たな取り組み」を来年計画される場合、是非この大型補助金を積極的にご活用いただければと思います。